『岩見沢市 齊藤知也さん/働き方が変わった今こそ地域がダイバーシティに進化するチャンス』

2022.11.21

若かりし頃とは違った視点で眺めることで見つけた地元・岩見沢のポテンシャル。東京で多くの経験をされた齊藤さんが辿り着いたアイデアをお聞きしました。

-はじめに自己紹介をお願いします。

齊藤さん:赤平市で生まれ、岩見沢市で育ち、大学から上京しました。現在は、IT関連やデジタルコンテンツの人材育成専門スクール及び大学を運営するデジタルハリウッド株式会社で執行役員を務めています。全国に受講生がいるスクールなので、その卒業生がフリーランスでも仕事がしやすいようにオンラインでサポートする事業に携わっています。

-東京と岩見沢の二拠点生活を始めたきっかけを教えてください。

齊藤さん:新型コロナ禍を機に東京にいる意味を考えていました。ちょうどその頃、岩見沢時代に通っていたライブハウスが閉店してしまうと聞き、何かできることはないか、地元に何か恩返しができないかと模索し始めました。よくよく話を聞いていると、どうやら岩見沢市そのものが活気を取り戻せずにいて、その部分に根源的な原因があると感じたんです。でも、だからといって街を出ていった私が先頭に立って地域活性を担うなんて、おこがましくていえません。そこで、まず現職の業務と連動させながら地元でクリエイターを育てていけないかと考えたんです。例えば、岩見沢に特化したWebサイトを構築したり、商店街に活動の拠点を作ったり…そして、全国の仕事をクリエイターたちへ提供するために「株式会社いちたすいちは」を創業しました。

-岩見沢でクリエイターを育てようと考えた理由を教えてください。

齊藤さん:20年ほどデジタルハリウッドでクリエイターを輩出する教育事業に関わってきたことがヒントになったんだと思います。

これまでの仕事というのは「会社」という場所が起点でした。でも最近ではテレワークや在宅勤務といったワークスタイルが当たり前になり、「リモートドリブン」どこに住んでいてもその場所が起点になって仕事ができるようになりましたよね。このワークスタイルは、時間や場所にとらわれずに仕事ができるクリエイターにピッタリな働き方なんです。例えば、好きな場所に暮らしながら東京の仕事ができるということ。これは、あらゆる地域でクリエイティブの教育と仕事の提供を実際に行ってきたから辿り着けた答えなのだと思います。

-岩見沢市でも十分に勝算はあったということですね。

齊藤さん:実際のところ、これまでは地方であっても人口10万〜20万人以上の人口を抱えるエリアでなければクリエイターを育てたり、仕事をしたりしてもらうことは難しいのが現実でした。つまり人口10万人以下の地域でITやクリエイティブの仕事は成立しづらく、非常に地域差があったというわけです。でも、これからの時代は人口の少ない街こそ、柔軟な発想でダイバーシティに応変していかなければならないと考えたんです。時間や場所に捉われずに働くことが当たり前になったんですから、地方都市こそこのチャンスを掴まなければいけません。

-人口10万人以下の都市、そのなかでのベンチマークを目指すということですね。

齊藤さん:だからこそ地元・岩見沢で、これまで私が経験してきたことを活かして事業をやってみようと決めました。クリエイターを育成して、イキイキと仕事をしている人が増えていけば自ずと街へ向けたクリエイティビティが高まると思うんです。例えば、新しくクリエイティブな仕事を提供することで、彼ら自身のライフスタイルもクリエイトすることになる。最初は一人一人の小さな単位ですが、彼らが集まり、増えていくことで街全体のクリエイティブを考える土壌が育めるのではないかと考えています。

-現在はどのような取り組みをしていらっしゃるのですか?

齊藤さん:クリエイティブなお仕事については、リモートを中心にして東京から岩見沢の人材へと提供しています。同時に彼らにとって地元で出番が作れる居場所も必要だと考え、アクティビティスペース「大正ボックス」を作りました。

-大正ボックスとは、どんな場所ですか?

齊藤さん:大正14年から続く古い建造店舗を再利用した、南空知のクリエイターたちのコミュニティ拠点です。コワーキングオフィスやミーティング、イベントなど、多岐にわたって利用できるスペースになっています。

-東京と岩見沢の二拠点生活を始めて良かったことはどんなことですか?

齊藤さん:多様性に富んだ人々との出会いでしょうか。特に、これまでデザインやデジタルの仕事がしたかったけれどチャンスがなかったという人たちと出会えたことは大きいですね。CGが作れる農業家、デザインの仕事に夢を持つ学生…十分なポテンシャルを持った人たちと出会って、一緒に新しい暮らしや仕事を創造しようとしていることがとても嬉しいです。

-岩見沢には、どれくらいのペースで訪れているのですか?

齊藤さん:現在は月に1〜2度、1週間ほど岩見沢に滞在しながら二拠点生活をしています。

-岩見沢の地域や、そこに暮らす方々との関わりについてはどうですか?

齊藤さん:先ほどお話しした「大正ボックス」を1年かけてDIYで作り上げたことで、かなり街との関わりは増えたんじゃないかなと思います。「ここに何ができるんですか?」「今までの岩見沢にない雰囲気ですよね?」といったお声をいただきました。そういった出会いがきっかけで私たちが考えるミッションやビジョンをお伝えする機会が増えていったと思います。

-その他にはいかがですか?

空知エリアのアーティストたちと出会ったり、岩見沢への移住者ネットワークや北海道教育大学の学生さんとのつながりも持てました。もちろん、これまで街の活性化をサポートしてきた方たちとも。1年という短い期間でしたが、あっという間に出会いが増えました。この「出会い」から色々なアイデアが、さらに生まれそうな予感がしています。

-具体的に現在進んでいる企画があるのですか?

「大正ボックス」を使った企画なのですが、こちらにはオープンキッチンも常設しているんです。そこで『食はクリエイティブ!』というテーマで「わたしレストラン」としてスペースを貸し出し、レストランを運営していただく企画を2022年の4月から実施しています。まさに地域の人たちとのコラボレーション企画ですね。

今年の6月には、“いちたすいちは”にかかわる仲間が集い、そこに北海道以外から岩見沢に旅行、出張、帰省、Uターン、Iターンしてきた方を招いて炭鉱めし(岩見沢は日本遺産となっている『炭鉄港』の構成文化財があります)を中心に、北海道の美味しいものを無料でふるまう企画もやったりしました。
約15名が地域を超えた関係作りを積極的に行っていました。

-最後に、これからの展望について教えてください。

これからも岩見沢の人たちとデザインやクリエイティブの仕事を続けていきたいと思っています。その上で多くの人たちと刺激し合える場所をさらに創り出し、地域にとってよりクリエイティブなカルチャーを育む事業を実現していければいいですね。

その他にもデジタル集客やEC化、キャッシュレス化などのデジタル化・DX化が図れるように岩見沢の企業・店舗を後押しして、リアルの店舗やオフィスに頼らない事業モデルの構築をサポートしてきたいです。決してアナログの資産を否定するわけではなく、古き良きものを再定義・再価値化することで岩見沢の街や暮らしをリデザインして、新たな価値を生み出すことを目指します。

そして、こういったことをひとつひとつ実現し、循環させていくことが持続可能な暮らしや生きがいのある仕事、自分らしく生きることにつながり、地域がクリエイティブで楽しい場所へとアップグレードされていくのだと信じています。